5 Feb 2017
■原状回復義務が厳しい■
居住用の賃貸物件の場合は国土交通省の原状回復ガイドラインのために過大な負担をせずに済みます。
しかし事業用物件の場合はこのガイドラインは原則対象外となっています。
このために事業用物件の原状回復義務は仮に小規模な店舗でも比較的高額となることが多いです。
貸主と借主がともに事業者ということで、消費者としての取引ではなく、事業者間取引という扱いになるということも関係しています。
また、居住用のように一般的かつ量産されて安価に供給される建材を使用していないテナントも少なくありません。
店舗の内装などではお客様へ非日常を提供しなければならないため、珍しい建材を使用するために壁・床・天井の下地へ特に造作が必要になる場合もあります。
そういった造作を撤去して原状に復するというのはコストが多くかかります。
■設備や造作は売却可能か■
原状回復義務を交渉により軽減することができれば理想です。
しかし貸主側も営利である以上は収益を出していかなければなりません。
これから出ていくテナントに対して温情でデイスカウントしてくれるとは考えにくいです。
このため、借主が入居時に自費で揃えた設備や造作を売却代金を充当する作戦が有効になります。
比較的多いのは業務用のエアコンや、飲食であれば業務用の冷蔵庫やショーケースなどです。
経年劣化なども考慮されますが、これらを撤去するにも費用がかかるので、少しでも足しになればという形です。
注意点としては、設備や造作を適切に維持していたかどうか。
年数の割には痛みが大きいとなると買い取る側に足元を見られてしまう場合もあります。
また、メンテナンスもしっかりしておかなければ、造作設備譲渡契約書にアフターケア期間の記載ができないなどといこともありえます。
■居抜きで売却可能か■
これは貸主も退去する借主も、そして新しい借主も含めた三者に利点があります。
またエコの観点からも、テナントが変わるたびに大規模なリフォームや設備処分が行われるのは好ましくはありません。
こういったことから居抜きによる売買取引も少なくはありません。
特に同じ業種、例えばラーメン屋やヤキトリ屋、カフェやケーキ店などはそのまま設備が使用できることも珍しくありません。
事務所などでも、パーテーションで小さく仕切った会議室や商談ルーム、書類架や投影設備などの設備はそのまま使用できます。
注意点としては、コストを抑えるために安かろう悪かろうという安価なパーテーションなどを使用してしまった場合。
これはむしろない方がマシと思われてしまうので、居抜き売買の場合でもこの部分の撤去費用分だけ値引き交渉されてしまう場合もあります。
詳しくは居抜き売却専門サイトで
■貸主に対するメリット■
借主側だけのメリットではなく、貸主側にも募集が容易になるなどのメリットを提示して理解を求める事が重要です。
貸主にしてみれば設備投資は借主が勝手にやるものだという認識が少なくはありません。
このため、退去時にはテナント内をスケルトン状態で明け渡すように頑として譲らない貸主も多いです。
しかし、居抜きのようにまだ使える設備や造作があり、そのまま営業も可能という募集宣伝も有効です。
新しく借りる側にとっては初期投資も抑えられるし、工事期間も短縮できるので早期に開業も可能です。
常識とは言え、賃貸借契約後の着工から完成までの期間の賃料は大きなロスとなってきます。
初期投資が重たくなれば開業後の資金繰りも難しくなってくるため、早期退去や賃料の滞納という貸主にとってのデメリットにもつながってきます。
あくまでも自分のメリットだけではなく、貸主のメリットも強調できるように整えておくことで、居抜き売買の交渉もスムーズに進むと思います。
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